同時通訳が頭の中で一瞬でやっている英訳術リプロセシングドリル
リプロセシングドリル
入力ください。# 対象者
- 中級者~
- ビジネス英語を学びたい人
本の特徴
- ビジネス英語のスピーキングに役立つ内容
- 例文はすべてビジネス関連
- リプロセシングとは、「伝えたい日本語をいったん英訳しやすい簡単な日本語にすること」
- 音声がついていない(残念…)
ビジネス英語
「同時通訳が頭の中で一瞬でやっている英訳術リプロセシング」は ビジネス英語のスピーキング本 です。
タイトルからはわかりませんが、例文の内容はすべて ビジネス関連の例文 になっています。
ビジネスで英語を使う方、特にスピーキング力を伸ばしたいと思っている方にとって役立つ内容です。
リプロセシングとは
著者の田村智子氏は、同時通訳者で通訳の学校で講師をしています。
本書では、英語のスピーキングにおける 「リプロセシング」 という方法が紹介されていますが、「リプロセシング」とはどういった方法なのでしょうか??
単純に訳すと「再加工」ですね。
「世界一わかりやすい英作文の授業」 では英語スピーキングのコツとして、「言いたい日本語を一度「子供に説明するような簡単な日本語」に置き換えましょう。そうすると英訳しやすくなりますよ」ということが説明されていました。
スピーキングのコツ
日本語 → 簡単な日本語 →英 語
「リプロセシング」は実はこれと同じことをいっています。
日本語を、「英訳しやすいようなわかりやすい日本語」に直す ことが「リプロセシング」です。
田村氏は「リプロセシング」を以下のように説明しています。
東京、四谷にある「日米会話学院」という学校で、同時通訳を目指す方々に、日本語から英語に訳す「日英」の通訳訓練を担当しています。受講生は、英語の得意な方々ですが、日本人ネイティブ同士で通常交わされるような、こなれた日本語を英訳するよう指名すると、途端につまってしまうことがあります。実は、自然な日本語をいきなり英訳するのは、とても難しい事なのです。しかし、最終的な英文に 「限りなく近い日本文を用意したうえで、英語に置き換えるようにすれば、英訳が楽になります。それが、本書で紹介する「リプロセシング」という方法です。
特にビジネスシーンにおいては、難しい表現、かしこまった表現を使うことが多いと思います。
だからこそ、その “日本語を一度やさしい日本語にかみ砕く” というプロセスが大切になります。
本書では、「ではそういうことで、一つよろしくお願いいたします」や「あいにく土日は立て込んでおりまして」など、なかなか英訳しにくいビジネス表現を「リプロセシング」といいうプロセスを通して英訳する方法について解説しています。
本書のトレーニングを通じて「一度簡単な日本語に置き換える」という発想が身につくことで、シンプルでわかりやすい英語が話せるようになると思います。
「リプロセンシング」の本は、2冊出版されています。
一方はドリルという形で続編となっていますが、このドリルの方がシンプルにまとまっていて、トレーニングがしやすいです。
個人的には2冊目がオススメです。
ちなみにですが、本書は音声がついていません。
これまで紹介してきたスピーキングの方法論的な本(5歳時英語、3語で話す)で音声ついているものがなぜか無いです。
音声がついているとフレーズを暗唱するなど、トレーニングの幅が広がると思うのですが、少し残念です。
ポイント
リプロセシングのステップ
日本語 -> 英語の変換方法
STEP1 分かりやすい日本語にする
STEP2 英訳できる日本語にする
1.主語と動詞を明確にする
骨組みである主語と動詞を見つける
主語の前に長い副詞(副詞句・副詞節)を置かない
動詞を手がかりに主語を見つける
動詞も省略されている日本語から推測する
重複部分を整理する
2 短い意味のまとまりに区切る
3.全体を見渡して整理する 4.目的語を明確にする
STEP3 英訳する
1.単語を選択する 2.英文を組み立てる 3.最終チェックをする
英訳完成
リプロセシングの例
日本語:「ではそういうことで、一つよろしくお願いいたします」
1:真意をつかみ、分かりやすい日本語にする。
→「ありがとうございます。どうか本件がうまくいくといいですね」
2:主語や動詞、目的語を明確にし、英訳しやすい日本語にする。
→「どうもありがとうございます。(我々は)~と願いましょう、物事が首尾よく運ぶように」
3:英訳する。
→ Thank you very much, and let's hope things will work out successfully.
英訳におけるコツ
「リプロセシングドリル」では、日本語から英語に直すポイント もしっかり押さえられています。
そのポイントは3つで、「英訳しやすい日本語」 に加えて、 「メッセージごとにフレーズのストック」 があること 「適切な主語と動詞」 を選ぶことです。
「リプロセシングドリル」では章ごとにこれらのトレーニングができるようになっています。
例えば、「お足元の悪いなか、わざわざお運びくださり、大変恐縮です。」を英語にしてみましょう。
まず、メッセージを考えると「感謝」を伝えれば良いと考えられます。
感謝を伝える「フレーズ」には、以下のようなものがまとまっています。
「Thank you very much for」
「I am very grateful to 人 for」
「I’d like to express my deepest gratitude to 人 for」
最初は多くのフレーズを覚える必要はありませんが、使うことができるフレーズが多いと、より正確にニュアンスを伝えることができたり、場面に応じて使い分けたりできるようになります。
「英訳しやすい日本語」ですが
1例として「雨にもかかわらず来てくれてありがとう」と簡単な日本語に変えることができます。
「伝えたいメッセージ」は感謝 ですので、恐縮はありがとうで十分です。
ポイントは「「あまにもかかわらず」という簡単な日本語を通して、「お足元の悪い中」と「in spite of(にもかかわらず)」というフレーズを結びつけられるかどうかです。
メモ:英語で考える
英語で考える
よく日本語で考えているからダメで、英語を話せるようになるためには「英語を英語で考えられるようになりましょう」と言われることがあります。
私の経験から言うと、これはある意味正しいのですが、英語学習の初中級者に「英語で考える」を求めることは無理ですし、初期の段階から英語のみで学習することが有効とは思えません。最初は理解しやすい日本語を使って英語の基礎を固めていく ことが大切です。
ただ、学習を進めるうちに、少しずつ日本語を使わないで「英語で考える」ことができるようになってくると思います。
その1つのポイントが本書で述べられている 「簡単な英訳しやすい日本語」 に直すということです。
「簡単な日本語」は自分の感覚により近い馴染みのある言葉で、また英語のニュアンスにも近い言葉です。
ですので、この「簡単で英訳しやすい日本語」に直すトレーニングを繰り返すことによって、しだいに「簡単な日本語」を介さなくとも、伝えたいメッセージと英語フレーズがリンクするようになって、「英語で考えられる」ようになっていきます。
使い方
STEP1
通読して、「英訳できる日本語にする」とそこから「英訳」する過程のコツを理解しましょう。
STEP 2
英訳する際には、メッセージごとに定番のフレーズを知っていることが大事になります。
ドリルの Chapter2 の文の種類別お決まりフレーズで必要だと思うものは暗唱して使えるようになりましょう。
STEP3
本書のドリルを利用して、日本語から自分の力で英訳できるようになりましょう。
自分で用意した素材で、リプロセシングに取り組んで見ることも良いトレーニングになるかと思います。
まとめ
- 英語スピーキングのコツは、伝えたいことをいったん英訳しやすい日本語に「リプロセシング」すること
WRITER
- はるちか
- 英語講師
TOEIC 975点 英検1級