[書評] 英会話・ぜったい・音読 【入門編】
英会話・ぜったい・音読
対象者
- 初学者〜
本の特徴
- 英語学習を始めた人はここからスタートしよう
- スクリプトは中学 1、2年生の英語の教科書から収録
- 音読により英会話の基礎力を作って、「読める英語」を「話せる英語」にする本
英語学習をはじめて、簡単な単語や文法を覚えたら、取り組んでいただきたいテキストです。
「聞き流すだけで英語が話せるようになる」という英語教材もありますが、
そういった教材とはまったく反対の
「徹底的な音読により読める英語を使える英語にしよう」 という硬派な英語テキストです。
本書をオススメする理由は、以下の 2 つです。
① 難易度が適当
② 練習を重視
① 難易度が適当
英語がうまくなるためには、自分のレベルにあった教材を選ぶ ことが大切です。
一般的に英語学習者はレベルが高い教材を使いがちです。
レベルが高い教材では学習効果が期待できず、達成感が得られにくく、その結果として学習のモチベーションを保ちにくくなります。
一方、本書は中学1、2年生用の英語教科書から 12 レッスン、音声で 1 レッスン 30 秒から 1 分程度の英文が収録されており、英語学習初学者に適当な内容となっています。
ただ、中学の教科書の英語といっても、このレベルで話せれば英語ができる人と見られるレベルです。
本書にも、 “このレベルの英語を「わかる」だけでなく「使える」ようになっている人がどれだけいるでしょうか”
とありますが、本当にその通りだと思いました。
レベルの高い教材を学習して自己満足するのではなく、自分の英語レベルにあったテキストを徹底的にやりこんでいくことが 「使える英語」 を身につけるには欠かせないことになります。
② 「練習」を重視
英語の学習では、単語を覚えたり文法を理解したりと知識を増やすことに意識が向きがちですが、そうではなくて本書のトレーニングは、音読を繰り返し“英語の感覚”を体に覚え込ませようという、スポーツで言えば「練習」を重視したものです。
目安として同じ教材を 1 ~ 2 ヶ月繰り返し音読することが勧められています。
本書の冒頭には同時通訳の神様と言われた 國弘正雄氏の解説が載っています。
「勉強」するだけでは、使える英語は身につきません。スポーツと同じで「練習」が必要です。
使える英語を身につけるには、読んで内容がわかる英文を、自分の身体が覚え込むまで、繰り返し声を出して読んでみることです。音読、そして筆写という、いわば英語の筋肉トレーニングを自分自身でやってみて、初めて英語の基礎回路が自分のなかに構築できるのです。
英会話・ぜったい・音読 【入門編】
その解説で“英語の感覚は”「英語の基礎回路」という言葉で説明されています。
「英語の基礎回路」とは、 「<英語 → イメージ>という直結の流れで理解できる思考パターン」 ことです。
英語ができない人は<英語 → 日本語 → イメージ>という道順をたどるため、英語の理解が遅く、多くの単語を知っていても上手に話すことができません。
英語の基礎回路ができれば、リスニングやリーディングにおける英語の理解が早くなり、スピーキングでも知っている語彙を使って話を組み立てることができるようになります。
私の学習経験からも、単語や短文のフレーズではなく、こういったある程度の長さの英文に触れていくことが英語力の向上に必須だなと感じています。
英語は短文やフレーズ暗唱だけではできるようになりません。
ある程度の長さの英文に触れることで、日本語とはまったく違う英語のパターンに慣れることができる、それが本書で説明されている「英語の基礎回路」を作ることにあたるのだと思います。
ちなみに、本書では日本語を入れないで理解するようにということで、英単語の意味は載っていますが、英文の意味は掲載されていません。
本書のトレーニングは、「音読を繰り返す」という地味なものですが、やっていると結構楽しく感じます。
内容が中学のテキストで、難易度が高すぎないのも良いです。
音読トレーニングはスポーツで言えば、日々の基礎練習のようなものかなと思います。
スポーツの基礎練習が、実践での自信につながるように、自信をもって音読できる英語が増えると英語力の伸びが実感でき、自分の英語力への自信につながってきます。
基礎的な単語や文法を少しやったけど、英語が上達した感覚が得られないという人は、ぜひ次のステップとして本書の音読トレーニングに進んでみましょう。
ポイント
1.聴くだけでは英語は話せるようにならない
「よく聴くだけで英語がペラペラ」といった教材がありますが、ありえないことだと思います。
国弘正雄氏も本書で以下のように述べています。
英語が自然に身につくなんてウソです
「ただ聞き流すだけで「いつのまにやら』英語が話せるようになる」
「『知らず知らず』のうちに英語が話せるようになる」
「英語が「自然に』身につく」
街にはこんな宣伝文句があふれかえっています。
こういう謡い文句をあなたは本当に信じますか。
私は自信を持って断言します。「いつの間にか、すらすらと「自然に身につく」なんてウソです。
そんなことは「ぜったい」あり得ません。
p10
では、英語が話せるようになるために何が必要か。
本書での答え、それが 「英語の基礎回路」 です。
音読によって、日本語とは違う“英語の感覚”、つまり「英語の基礎回路」を身につけるというのが本書のテーマです。
私が、今から英語の学習をはじめるとしたら、中学英語の単語、文法とやると同時に本書を音読するところからスタートすると思います。
2. 日常会話 1000 語でよい
ある調査によると、専門用語を用いるような会話は別にすると、英語での日常会話はおよそ 1000 語ほどで事足りているとのことです。
1000 語というと、中学3年までで習う語彙数にほぼ相当します。
p22
私もそうでしたが、難しい単語は知っているけど、なかなか会話にはならないという人は多いと思います。
その原因は単語が足りなくて感じる方もいると思いますが、もしある程度単語力があるのに話せないということであれば、それは単語を運用する能力が足りない、理解はできるけれども使える段階になっていないのかもしれません。
「日常会話は 1000 語でよい」ということから、そういった場合には、本書レベルの英文を「使えて」「話せる」段階に持っていくトレーニングが必要になると思います。
使い方
トレーニングは、1 日 1 レッスンずつ英語を聞き、熟読し、そして何度も音読練習をする。
12 日で全レッスンが終わったら、レッスン 1 に戻って再び練習を続ける。
STEP1
はじめはとにかく繰り返し聞いて、英語に対する「なじみ感」を作っていきましょう。
通勤などのときに聞きっぱなしにするだけでも良いと思います。
STEP 2
英文に慣れてきたら、英文を見ながら音読をしていきましょう。
何度か見ながら音読を繰り返すと、音声を聞きながら、英文を見ないでも音読ができるようになると思います。
本書では、1~ 2 ヶ月同じ英文に取り組むことが勧められています。
一度にできるようになる必要はないので、「聴くだけ」→「見ながら音読」→「音声を聞きながら音読」とステップを踏んでいくイメージを持つと良いと思います。
STEP3
音読トレーニングをやりきったらシャドーイングに取り組んでみることをオススメします。
シャドーイングの入門書としては「はじめての K/H システム」が良書です。
また、本書で勧められている筆写トレーニングを行ってみるのも有効だと思います。
まとめ
- 音読により「英語の基礎回路」を作って、「読める英語」を「話せる英語」にしよう
WRITER
- はるちか
- 英語講師
TOEIC 975点 英検1級